GRIFFINマガジン - 2024年7月26日
加速するトラックの進化。日本の現状とスカニアのテクノロジー
物流・運送業界は、いわゆる「2024年問題」によるドライバー不足や輸送コストの上昇、さらには燃料価格の高騰や環境負荷の低減などさまざまな課題に直面しています。これらを解決すべく、コネクテッド技術やテレマティクス、電動化などトラックメーカーのイノベーションが加速しています。
ここでは、進化するトラックテクノロジーのなかでも注目の技術とあわせて、スウェーデンに本社を置くScania(スカニア)のソリューションをご紹介します。
コネクテッド技術とテレマティクス
一般的な乗用車だけではなくトラックにおいても、コネクテッド技術やテレマティクスの活用が広がっています。コネクテッド技術とは、インターネットや通信ネットワークを通じてデバイスやシステムが連携する技術を指し、テレマティクスとは、車両に通信システムを搭載して情報サービスを提供することを意味します。
メーカーや車両による違いはありますが、コネクテッド技術やテレマティクスによってネットワークとつながったトラックには、例えば次のような機能が含まれます。
・運行車両の一括管理
運用する車両の現在位置や走行距離、走行ルートなどの一括管理が可能となり、業務や車両の状況を遠隔で確認できます。ドライバーのプライバシーへの配慮は必要ですが、車両の効率的な運用につながります。
・周辺の交通情報の収集
リアルタイムで周辺の道路状況に関する情報を収集・共有することで、渋滞や事故など考慮すべき状況を即座に把握できます。これにより、最適なルート選択が可能になり、輸送効率の向上を図ることができます。
・車両の状態の分析
車両の稼働時間や走行距離、燃費などのデータから車両のコンディションを分析します。運行前点検のサポートのほか、適切なタイミングでのメンテナンスを提案する機能を持つトラックも見られます。
・ドライバーの運転行動の把握
走行速度や加速度、ブレーキの強さ、運転時間などのデータを収集・分析し、安全運転に関するスコアの算出や危険運転箇所の特定を行います。こうした情報をもとに、安全運転意識の向上や運転スタイルの改善を図ることで、より安全で燃費のよい走り方を実践できます。
スカニアの場合は、その傘下にスカニアの研究開発部門の延長として2008年に設立された運送会社「トランスポート・ラボラトリー」があり、そこで得られるデータはスカニアの製品の開発や改善に活用されています。また、スカニアの日本法人・スカニアジャパンは、2025年前半までに、すべての整備拠点でテレマティクス技術を活用した予防整備サービスを展開する予定です。
燃費効率の向上と環境への配慮
燃費性能や環境配慮につながる技術開発も進められています。燃費効率の向上によってCO2排出量が低減され、環境対策にも貢献できます。
燃費性能に優れた車両の開発
長距離を走行するトラックにとって、燃費効率はランニングコストを大きく左右する最も重要な要素の一つです。国内外のトラックメーカーも、パワフルな走りを保ちつつ高い燃費性能を持つ車両の開発を積極的に進めています。
2023年11月に日本での販売を開始した新型スカニア「SUPER」も、燃費効率に優れた革新的なパワートレインを搭載しています。5年の歳月と総額20億ユーロ(日本円で約3,140億円)を超える費用をかけ、エンジン、ギアボックス、リアアクスルを新たに開発しました。2024年には、ヨーロッパのトラックメーカーのなかでも特に高い燃料効率を実現した長距離トラックに贈られる「グリーントラックアワード」の9度目の受賞も果たしています。
トラックの電動化
環境配慮の観点から、トラックの電動化(EVトラック)も注目されています。電動化の最大のメリットは、車両から排出されるCO2の削減です。また、静粛性が高いため、市街地での騒音問題を抑えられるうえ、振動の少なさから乗り心地が向上し、ドライバーの疲労感も軽減されます。
スカニアも、グローバルでは2014年に電動ハイブリッドバスを、2016年にはハイブリッドトラックの提供を開始しました。現在は、バッテリー電動車両(BEV)やハイブリッド車両(HEV/PHEV)に加え、都市バスから64トンの総重量を持つ電動トラックまで、さまざまなソリューションを提供しています。また、パートナーと協力し、充電インフラの構築と拡大にも取り組んでいます。
一方、日本国内では、EVトラックの購入費用や充電インフラの整備、整備を扱う工場への設備投資や技術者のトレーニングなどが課題となっています。こうした条件が満たされれば、日本市場でもスカニアの電気自動車を見られる日が来るかもしれません。
先進運転支援システム
先進運転支援システム(ADAS)は、ドライバーの安全運転をサポートし、事故のリスクを低減するための技術です。
例えば、長距離走行時の疲労軽減や燃費向上に役立つ「クルーズコントロール」は、前方車両との安全な車間距離を自動で維持します。スカニアにも「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」があり、走行速度が遅い車両に追いついた場合はその速度に合わせて減速し、事前に設定した車間距離を保ちます。前方の渋滞が解消されると通常の速度に戻るため、不要な加速や減速を防ぐことができ、燃費の向上やドライバーの疲労感の軽減、事故リスクの低減につながります。
また、障害物や歩行者を検知する「カメラシステム」も、安全性の確保に欠かせない機能です。スカニアの場合、車両の前面、背面、側面をカバーする4台の広角 720p HD カメラが連携して機能し、360°の視認性を提供する「エリアビューHD 360°カメラシステム」が搭載されています。
そして、衝突の回避や被害の軽減を支援する「衝突被害軽減ブレーキ機能」を持つトラックも見られます。センサーで障害物を検知し、段階的にドライバーへの警告やブレーキの補助操作などを行う機能で、スカニアには「Scania AEB ブレーキ システム」が備わっています。この機能による衝突危機の低減効果は、スカニアジャパン公式サイトの動画「Safety in all situations(すべての状況下での安全性)」をご確認ください。
このほか、スカニアでは、雨で滑りやすい路面など横転のリスクが高い場面で働くESP(エレクトリックスタビリティプログラム)や、車線逸脱警告、車線変更衝突防止、アルコールロックなど、安全な走行を支援するさまざまな機能を提供しています。
※上記の各種運転支援システムはドライバーの運転支援を目的としているため、機能には限界があり、路面や天候などの状況によっては作動しない場合があります。機能を過信せず、安全運転を行っていただくことが前提となります。詳しくは最寄りのディーラー営業担当者にお問い合わせください。
スカニアの技術と未来に向けたアプローチ
今回ご紹介したトラックのコネクティビティや環境配慮、電動化の革新は、持続可能な輸送への移行を目指すスカニアにとっても重要な取り組みです。これに関連して、スカニアでは変化する時代のニーズに寄り添うべく、最先端のテクノロジーを導入した車両管理者用のオンラインプラットフォーム「My Scania」を新型スカニア「SUPER」を通じて提供しています。
My Scaniaは、ビジネスの最適化をサポートするデジタルエコシステムの一環です。「フリートアプリ」とドライバー用の「ドライバーアプリ(※2024年中に運用開始予定)」と統合させることで、パソコンやタブレット、スマートフォンからいつでも必要なサービスにアクセスできるようになります。なお、SUPERには最新のフルデジタルクラスタ「スマートダッシュ」が搭載されており、そこにMy Scaniaやドライバーアプリも含まれています。
スカニアの技術力を結集した新型パワートレイン「SUPER」の詳細につきましては、以下のページよりどうぞご確認ください。